2012年8月 月次レポート(丹羽裕美 韓国)
月次レポート 8月
東京外国語大学 博士前期課程
言語文化専攻 丹羽裕美
派遣先:韓国外国語大学校大学院
韓国のKBS (日本でいうNHK) ニュースでは連日、日韓の外交問題が取り上げられている。市民レベルではこれを冷静にみる人が多いが、一方で今まで築きあげてきた両国の友好関係が水の泡になるのではと不安視する声もでてきている。そして私自身も経験したが自分の意見をはっきり主張することを好む国民性のためか、まちなかで日韓問題について見ず知らずの韓国人から意見を問われる経験をしている日本人も少なくないようだ。
8月中通っていた、大学付属の語学堂の修了式で生徒代表としてスピーチする機会を与えられたので、現在「対話」を通して文化的領域まで相互理解を深めている私たちのような韓国語学習者の力が「人とのつながり」を「国家間のつながり」へ発展させていく交流の原動力になると信じている、といった内容を含めたスピーチをおこなった。
語学堂では、1日4時間の授業を週4日、担当講師は2名で行われた。一人が、①文法、慣用句②討論を、もう一人が③ニュースや映画など動画をつかった聞き取り④作文を担当した。感心したのは授業の進め方と教材の内容が上手く連動している点であった。
具体的には1日目の①で習った文法内容が、③のニュースの聞き取りに使われ、その内容をより深めるために④作文が宿題になる。2日目は宿題で書いてきた作文について②討論をしながら作文の書き方や接続詞の使い方などを学ぶ。このように授業を進めていくことで②討論では活発な意見交換ができた。また文法では「ほめ」や「謙遜」のといったカテゴリーで様々な表現の仕方や微妙なニュアンスの差異について学んだ後、数人のグループに分かれてその表現を使った会話文を作り、発表させられた。それによりその表現が自然に出てくるようになり、またそれをグループで行うことで自分の持つ語彙力を超えた豊かな表現を学ぶことができた。さらに習った文法表現が③ニュースや映画の中に出てくることで母語話者の使用場面がより具体的に理解できるという、映像の効果的な使い方を学ぶことができた。これら語学堂で体験したことは今後の自分の研究にもおおいに役立つと思われる。
その他、8/11、12の両日は高麗大学でおこなわれた「国際韓国語教育学会」に参加した。そこでは主に談話、テクストの理論をより実践的なものにするための韓国語教育の在り方などが国際的な視座から討議され、日本からは国際文化フォーラムが進めている「外国語学習の目安」についての発表が行われた。これは私も参加している「外国語授業実践フォーラム」が今後3年間理論基盤と実践の検討を行っていく核となる部分であり、これが今回の学会で韓国やトルコの先生方から高い評価を受けたことは、今後の活動に大きな力になると思われた。