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2012年8月 月次レポート(冨澤宣太郎 オランダ)

ITP-AA月次レポート(8月)

冨澤 宣太郎

 今回のライデン大学への派遣は2ヶ月を計画しているので、当月で派遣最終月ということになる。
 在蘭の方によると異常気象であったライデンの7月の冷夏も、8月に入るとそれまでの重々とした曇り空もすっかりと晴れ渡り、気持ちのいい天気が続いた。この陽気に誘われてライデンの街を歩けば、街中を巡る運河にはボートが行き交い、カフェのテラスには日光浴がてら酒を飲む人々で溢れかえっている。8月が終わりに近づくにつれバカンスから戻ってくる学生が増え、大学の街ライデンは活気づいてきていた。

 8月は、前月に引き続きライデン大学のBoot教授と面談を行った。面談内容は主として方法論的諸問題であり、やや議論項目を詳細に書けば、《理解》を巡る理念型の使用と、《日本的》という形容に関して、であった。前者に関しては、渡蘭前から自らの方法論的問題として研究をしてきている内容であったが、後者《日本的》という形容に関しては教授との面談までは盲点であった問題である。この問題は私の問題関心に限ってではなく、《比較》という作業を行う以上、是非とも取り組むべき重要な問題であって、教授とこの問題に関して議論を行うことができたことは非常に貴重であった。この項目に関しても、やや詳細を述べれば、《比較》という作業を通じて、炙り出された差異をいずれにか因果帰属して説明する場合、それら原因とその結果である差異を我々は《日本的》と形容することが可能なのか。可能だとするならば、その際、前提とされるのは、その《日本的》なる形容詞の意味内容の客観性である。この客観性は担保されるのか、その客観性は実証的な議論?検証に耐えうるか。また、果たしてその形容の意味内容に《日本的》と冠することは妥当なのか。という主旨であった。
 また、8月は基礎文献の精読、関連する研究論文の要約も行った。ライデン大学図書館のオンラインデータベースには日本からは手に入りづらい海外日本研究者の論文が多数掲載されており、効率よく研究を進めることができた。

 今回のライデン大学への派遣を総括するに、恐らくこのレポートからも察することが出来る通り、非常に有益な二ヶ月間であった。日本ではあまり接することのできない、研究対象を同じくする海外研究者が日本を見る視点?角度を肌で感じることが出来たことが何といっても今回の派遣の最大の収益であった。そして収益でありながらも、そこに接した結果、自らの今後の課題も見えてきた。
 この場を借りて、派遣中にお世話になったBusser教授、Boot教授、またライデン大学の学生?留学生にお礼を申し上げたい。

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