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2009年8月 月次レポート(及川 茜 シンガポール)

ITP-AA 月次レポート(2009年8月)
                                            博士後期課程 及川 茜
                                  シンガポール国立大学(2009.8-2010.2)

 8月1日にシンガポールに到着、派遣先のシンガポール国立大学(NUS)人文社会学部中文系における研究生活を開始した。大学から宿舎の提供を受けることはできなかったが、住居は日本で探し仮契約を交わしていたため、空港から直接入居となりスムーズに生活の基盤を作ることができた。
 七ヶ月という滞在期間をカバーするビザを取得するため、派遣先には日本の研究生に相当する身分で籍を置くこととなり、最初の一週間は主に大学における手続きや学生ビザの申請を行った。シンガポールでは諸手続きの相当部分がオンラインで行われるため、入学手続きに際しては事前にオンライン登録した書類のハードコピーを提出し、学生証とビザ申請に必要な書類を受け取るだけで済んだ。
 新学期に合わせて来星したため、手続き期間終了後の滞在二週目から授業の開始となった。この時、指導教授である容世誠(Yung Sai-shing)先生のところにご挨拶に伺い、併せて中文系の先生方?スタッフを紹介して頂いた。
 私の所属先である中文系では、授業は他学科の学生向けの一般教養に相当する科目を除き中国語で行われる。外国語としての中国語学習のクラスは中文系には設けられておらず、学部の1年の授業から高度な中国語運用能力が要求されるため、学生はほぼ全員が中国語の背景を有するようである。8月下旬に院生対象のオリエンテーションに参加したところ、シンガポール以外の地域の出身者が大半を占めることが分かった。中でも、北京大学と協定が結ばれていることもあり、中国からの学生が多いという印象を受けた。ただし、オリエンテーションでも強調されていたのがバイリンガル教育であり、特に中国など英語を日常的に用いない地域出身の学生には、積極的に英語のクラスを履修することが奨励されている。また、学際的な研究も歓迎され、他学科で開講される授業の履修も奨励されているようである。さらに、幾つかのテーマに応じて研究グループが設けられ、ほぼ毎週のようにワークショップや座談会が開催されている。
 自分の研究に関しては、引き続き研究対象である都賀庭鐘の著作の精読作業を行うと同時に、主にNUSの中文図書館において理論的方面で参考にできそうな文献の調査を行った。中国文学に対する日本漢文小説の位置づけを考察するに際し、シンガポール?マレーシアなどの華文文学の研究状況を一つの手がかりにできないかと考えて来たが、日本の漢文小説に関する研究書と華文文学の研究書が隣り合って配架されているのを見出したのは嬉しい驚きであった。また、時間の制約を考え、現地の華語出版物については能う限り蒐集することを第一とし、シンガポール内の中文書店での調査に当たっている。店頭には出版年度が比較的新しいものしか並んでおらず、NUSの図書館でもシンガポール?マレーシアの書籍には貸出禁止のものが多く、予想以上に入手困難である。ちょうど8月22?23日には国立図書館の古書放出セールがあったため、目についたシンガポール?マレーシアの出版物は文学関係を中心に全て購入して来た。
 今月は生活環境を整えることに時間を取られ、文献を読むことが中心の受動的な研究に終始したが、来月からは少しずつそれを中国語でまとめてゆくことを考えたい。

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