2017年度世界史セミナーのお知らせ 終了しました!
東京外国語大学 夏期世界史セミナー ―世界史の最前線IX―
(海外事情研究所主催?高大連携事業)
2017年7月27日(木)~28日(金) 東京外国語大学府中キャンパス 研究講義棟 227(予定)
お申し込みは、
http://ngc2068.tufs.ac.jp/igas/htdocs/
からお願い致します
プログラム(※今後の調整によって、多少、変更になる可能性もあります。)
7月27日(木)
9:00~9:30 受付
9:30~9:40 海外事情研究所所長挨拶(大川正彦)
9:40~10:40 講義1 スペイン帝国と複合君主政論(立石博高)
10:40~11:00 質疑応答
11:10~12:10 講義2 歴史からみる香港、香港からみる"中国"(倉田明子)
12:10~12:30 質疑応答
12:30~13:30 昼休み
13:30~14:30 講義3 マジャパヒト:14世紀~15世紀東南アジア島嶼部の覇者の実像(青山亨)
14:30~14:50 質疑応答
15:00~16:00 講義4 古き良きアメリカと消費者共和国(金井光太朗)
16:00~16:30 質疑応答
7月28日(金)
09:00~09:30 受付
09:30~10:30 科研調査報告 高大連携による近現代史教育の可能性―科研費プロジェクト報告― (鈴木 茂)
10:30~11:00 質疑応答
11:10~12:10 講義5 シロンスク?スレスコ?シュレージエン(シレジア)?l?sk/Slezsko/Schlesien (Silesia):境界地域の現代史(篠原琢)
12:10~12:30 質疑応答
12:30~14:00 昼休み意見交換会?懇親会(学生会館ホール)
14:00~15:00 講義6 植民地/帝国の歴史と思想―近代日本思想とアジア(米谷匡史)
15:00~15:20 質疑応答
15:30~16:30 講義7 「イスラーム国という現象」とは何だったのか? (青山弘之)
16:30~16:50 質疑応答
プログラムのPDF版はこちらです。
参加条件
日程 2017年7月27日(木)、28日(金)(2日間)
会場 東京外国語大学 府中キャンパス(東京都府中市朝日町 3-11-1)
西武多摩川線「多磨」駅より徒歩5分、又は京王線「飛田給」よりバス
対象 高等学校、予備校の世界史担当教員
※教員免許を志望する本学の大学院生: 授業の一環です。
受付締切 2017年7月14日(金)
受講料 無料
懇親会 無料
応募方法
下記URLよりフォームにしたがってお申し込み(2017年7月14日(金)まで)
http://ngc2068.tufs.ac.jp/igas/htdocs/
なお、宿泊が必要な方は、事前に宿泊先を確保した上でお申し込みください。
講義概要
立石博高「スペイン帝国と複合君主政論」
近世ヨーロッパにおいて諸王国?諸領邦を包摂した政治体は、1992年に発表されたスペイン史家J.H.エリオットの論稿によって「複合君主政」と定義されている。それまで、近代「主権国民国家(ソヴリン?ネーション?ステイト)」への到達を前提としたうえで近世国家?近世社会の特質を問題としてきた議論とは異なり、近世という時代的枠組みのなかで代表的な政治体の多様性と可能性を論じることによって、目的論的な歴史観(ナショナル?ヒストリー)への根本的な批判を行なったのであった。わが国では、複合国家論や礫岩国家論のなかでエリオットの研究はたびたび言及されているが、その基本的スタンスをあらためて確認することは重要である(J.H.エリオット著、立石博高?竹下和亮共訳『歴史ができるまで―トランスナショナル?ヒストリーの方法』、岩波書店、2017年6月刊行予定を参照)。しかし、エリオットの複合君主政論には、ひとつにはフェリーペ二世の時代を典型として「等しく重要なもの同士の」合同が実現したとする調和的な時代が想定されているきらいがある。もうひとつには複合君主政体を統合する装置についての考察が不十分な面も見受けられる。本報告では、そうした問題関心にたって、あらためて「スペイン帝国」の動態を概観したい。
倉田明子「歴史からみる香港、香港からみる“中国”」
2017年7月1日で香港は中国返還から20周年を迎える。イギリスによる植民地統治が終わり、新たに「一国二制度」という特殊な環境のもとに置かれた香港は、中華人民共和国の一行政単位でありながら、さまざまな面で「大陸(中国)」との「違い」を保持しながら今日に到っている。その間、香港と大陸の関係性は大きく変化し、昨今では雨傘運動で世界の注目を集めたように、両者の対立の側面が際立ってきている。
香港は小さいながらも中国の内と外をつなぐ窓口として機能してきた土地である。香港とはどのような場所だったのか、どうして大陸との「違い」が生まれ、それが現在にどのように影響しているのか、を知ることは、香港という小さな領域を超えて、中国、東アジア、そしてグローバルな歴史と現在の理解にもつながる。本報告では、香港と大陸中国の関係性を植民地香港の成立時期までさかのぼって歴史的に検討するとともに、その香港を通してみえる中国の現在についても考察する。
青山亨「マジャパヒト:14世紀~15世紀東南アジア島嶼部の覇者の実像」
マジャパヒトは14世紀から15世紀にかけて東南アジア島嶼部に勢力をもったジャワ島の王国である。しかし、高校世界史教科書には必ず記載されている割には、学生に残るイメージは薄いのではないだろうか。カンボジアのアンコール?ワットのような巨大遺跡が残されていないことも一因であろう。これは裏返せば、マジャパヒトは巨大遺跡の建設を必要としなかった国家と見ることもできる。マジャパヒトの繁栄の基盤は、対外的には海上交易の支配、国内的には政治的文化的な統合の進展にあったと考えられる。この報告では、マジャパヒトの建国から最盛期を経て衰退するまでを概観したうえで、同時代の東南アジアにおけるマジャパヒトの位置づけ、後代のインドネシアに及ぼした影響という二つの側面に着目して、マジャパヒトの実像に迫ってみたい。主な史料として14世紀に書かれた宮廷叙事詩『デーシャワルナナ』(『名著で読む世界史120』所収)を取り上げる。
金井光太朗「古き良きアメリカと消費者共和国」
第2次世界大戦を経てアメリカは、スィートホームの理想の下で大量消費社会を実現した。大量生産は住宅も含めて規格化された商品を安く供給し広く民衆レベルで自由に消費できるようになった。豊かな社会、古き良きアメリカの実現である。しかし、それは単純に皆が幸福だったわけではなく、明確な体制原理を伴っていた。豊かな賃金と福祉体制は男性労働者中心であり、女性は専業主婦が理想的な役割とされた。また、消費社会は個人選択の自由を極大化してゆく。郊外住宅は同質層の集まりとなり、それは行政需要の大きさと負担を決定してゆく。つまり、裕福なコミュニティは政府への依存が小さく、他方大都市のゲットーは行政需要が大きいにもかかわらず財源不足に陥ってしまう。市民は消費者として税負担に見合った行政サーヴィスを要求し、サーヴィスの必要がない以上減税を求めた。大都市に必要な財源までサーヴィスを受けない郊外が負担するいわれはないとする。ティーパーティー運動であり、トランプである。消費者意識からすると公共意識は弱まり民主主義の将来も懸念される。
篠原琢「シロンスク?スレスコ?シュレージエン(シレジア)?l?sk/Slezsko/Schlesien(Silesia):境界地域の現代史」
シュレージエン(またはシレジア)は、高校世界史の教科書では、オーストリア継承戦争?七年戦争を記述する文脈で必ず登場する。少し詳しい参考書では、シュレージエンはプロト工業化の先進地域として、織物業が盛んであったことや、織工一揆について記されているものもある。また、第一次世界大戦後の国境画定にあたって住民投票が行われたことに触れられている場合もあろう。しかし、シュレージエンがピアスト朝の故地であったこと、長らく「聖ヴァーツラフの王冠の諸邦」に属していたこと、宗教改革期には、新教徒のアジールとなっていたこと、第二次世界大戦後、多くの住民が追放されたことや、新たに植民してきたこと、などについて知られることは少ない。
ただし、ここではシュレージエンの歴史の細部の知識を補うことが目的ではない。非常に複雑な「境界地域」としての歴史を、一貫した歴史叙述に整序することができないとすれば、境界地域の歴史の「話法」を編み出さなければならない。相対的に小さな地域の歴史から、ヨーロッパ史の語り方を見直すことを試みたい。
米谷匡史「植民地/帝国の歴史と思想―近代日本思想とアジア」
アジア?植民地と帝国?日本が連関し、矛盾?葛藤をかかえる状況について、近代日本の思想家たちはどのように考えたのだろうか。東アジアの植民地問題と、日本の政治?社会問題を連関させ、帝国秩序の変革?改造を考えた思想の系譜について検討したい。
朝鮮?台湾?中国の民族運動と日本の民主化運動を連携させようとした吉野作造。植民地に資本主義が浸透し、帝国全体の社会問題が顕在化するなかで、植民政策を改革しようとした矢内原忠雄。そして、日中戦争期の危機のなかで、東アジアの多民族の共生と社会変革をめぐって、東亜協同体を論じた三木清?尾崎秀実。近年の植民地研究、帝国史研究の動向をふまえて、主に戦間期?戦時期のアジア論の系譜を考察する。
青山弘之「『イスラーム国という現象』とは何だったのか?」
イスラーム国は、2014~15年にかけてイラク、シリアだけでなく、欧米諸国を含む各地で「テロ」で繰り返し、「国際社会最大の脅威」として世界を震撼させてきた。欧米諸国、ロシア、トルコなど各国の思惑の違いはあるものの、イスラーム国に対する「テロとの戦い」は一定の成果をあげ、彼らの主要拠点であるイラクのモスル、シリアのラッカ解放も秒読み段階に入っている。本報告では、イスラーム国をめぐる問題がその「敗北」によって一つの節目を迎えようとしているなか、「イスラーム国という現象」すなわちイスラーム国の名をもって認知されてきた集団、思想、そして活動が現代史において以下に位置づけられようとしているのかを考察する。
【科研調査報告】鈴木 茂「高大連携による近現代史教育の可能性―科研費プロジェクト報告―」
東京外国語大学海外事情研究所に所属する教員を中心に、「地域研究に基づく「世界史」教育の実践的研究」を行った。この報告では、2013年から3年間にわたって実施した各種アンケート、聴き取り調査からをもとに、地域研究と連動した世界史教育、とりわけ日本を含む近現代史の教育が抱える課題と可能性について検討する。いま高校における歴史教育は、新必修科目として創設される「歴史総合」の内容や教科書?教材、教育方法、現行の大学入試センター試験に代わる新テストの導入など、大きな変化に直面している。こうした動きに対し、歴史学?地域研究の研究?教育に携わる大学および大学教員がどのように貢献できるのか、考えてみたい。
講演概要のPDF版はこちらです。
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