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2016年度世界史セミナーのお知らせ 終了しました!

東京外国語大学 夏期世界史セミナー ―世界史の最前線VIII―

(海外事情研究所主催?高大連携事業)

2016年7月28日(木)~29日(金) 東京外国語大学府中キャンパス 研究講義棟 227(予定)

ウェブでのお申し込みは、
https://business.form-mailer.jp/fms/2f2d0ad240551
からどうぞ!

プログラム(※今後の調整によって、多少、変更になる可能性もあります。)

7月28日(木)
9:30~10:00 受付
10:00~11:20 講演 イスラームから見る近代史(仮)(板垣雄三?東京大学名誉教授)
11:20~12:00 上記にかんする討論
12:00~13:00 昼休み
13:00~13:10 海外事情研究所所長挨拶(大川正彦)
13:10~14:10 講義1 インド史叙述とダリト(元不可触民)の/による歴史(粟屋利江)
14:10~14:30 質疑応答
14:30~15:30 講義2 中国と宗教 ―キリスト教からみる中国社会(倉田明子)
15:30~15:50 質疑応答
15:50~16:20 休憩
16:20~17:20 講義3 1812年の戦争:共和国と帝国の冷戦と熱戦(金井光太朗)
17:20~17:40 質疑応答

7月29日(金)
09:00~09:30 受付
09:30~10:30 科研調査報告 高大連携による近現代史教育の可能性 ―科研費プロジェクト3年間の経験から―(鈴木茂)
10:30~11:00 質疑応答
11:00~11:10 休憩
11:10~12:10 講義4 日本の城と樹木 ―人びとの暮らしと城との関係に注目して(吉田ゆり子)
12:10~12:30 質疑応答
12:30~14:00 昼休み意見交換会?懇親会(学生会館ホール)
14:00~15:00 講義5 近世ポーランド?リトアニアの東部地域における宗派問題:殉教事件を例に(福嶋千穂)
15:00~15:20 質疑応答
15:20~15:30 休憩
15:30~16:30 講義6 イスラーム世界の歴史とイスラーム(飯塚正人)
16:30~16:50 質疑応答

プログラムのPDF版はこちらです。

  

参加条件

日程 2016年7月28日(木)、29日(金)(2日間)

会場 東京外国語大学 府中キャンパス(東京都府中市朝日町 3-11-1)
西武多摩川線「多磨」駅より徒歩5分、又は京王線「飛田給」よりバス

対象 高等学校、予備校の世界史担当教員

受付締切 2016年7月15日(金) 23:59まで

受講料 無料

懇親会 無料

応募方法

下記URLよりフォームにしたがってお申し込み(2016年7月15日(金) 23:59まで)
https://business.form-mailer.jp/fms/2f2d0ad240551

なお、宿泊が必要な方は、事前に宿泊先を確保した上でお申し込みください。

講義概要

粟屋利江「インド史叙述とダリト(元不可触民)の/による歴史」
 1980年代初頭、インド近代史研究の分野から登場した「サバルタン?スタディーズ」グループの影響は、多大である。同グループが提起した問題は、非エリートの価値観や世界観の相対的自律性、インド?ナショナリズム記述のエリート性、植民地的近代性批判、新たな歴史史料の開拓と読み、「政治」概念の拡張など多岐にわたった。
 同グループに対する批判は当初から様々な立ち位置から行われてきたが、昨今では、ダリトからの批判が注目に値する。ダリト知識層にとっては、「サバルタン?スタディーズ」もバラモン的なバイアスから自由ではない。歴史叙述を「非バラモン化」し、自らの「歴史」を復権することを目指すともいえるダリト知識層の歴史叙述は、語り?記憶?神話?パフォーマンスまでを取組み、既存の「客観的」、「実証的」歴史研究に挑戦している。彼ら?彼女たちが目指すインド歴史像、歴史叙述の営為とはなにか、そして、それらは、かつての「サバルタン?グループ」の一部も関心を注いでいる「大衆的(ポピュラー)」な領域の歴史と如何に接合するのか、この講義では考察を加える。

倉田明子「中国と宗教 ―キリスト教からみる中国社会」
 中国ではこの数十年で宗教信仰を持つ人々が増加しています。特にキリスト教の信徒数は急激に伸びていると言われ、現在、少なく見積もっても人口の6~7パーセント、つまり7千万~8千万人の信徒がいると言われています(ちなみに日本のキリスト教人口は1パーセント以下です)。最近では、浙江省の地方当局による教会堂の十字架撤去問題や牧師の拘束など、キリスト教に対する政権の警戒心を示すような事案も増えています。
 そもそもキリスト教は近現代の中国の歴史のなかで、単なる宗教としての役割を超えたさまざまな作用を及ぼしてきました。西洋の「先進的」知識の媒介者として、或いは「伝統」が戦うべき相手として、交流と衝突を繰り返しながら、徐々に中国社会に定着してきたと言えるでしょう。こうした中国キリスト教がたどった歴史的変遷も紹介しつつ、中国の宗教、特にキリスト教を通して見えてくる中国社会の今を考えてみたいと思います。

金井光太郎「1812年の戦争:共和国と帝国の冷戦と熱戦」
 アメリカ独立後、合衆国とイギリス帝国(カナダ)は複雑な関係にあり、安定した両国関係を築くことができなかった。それゆえアメリカは未だ画定した国境と国民を持てないでいたのである。アメリカ共和国からすれば、カナダのイギリス人は自治を求めて帝国に反逆し、合衆国に加盟してくるのが必然であった。他方、イギリス帝国からすれば、共和国など小国にしか成り立たないのであり、君主の権威のないまま諸利害が噴出、対立すれば分裂、解体に至り、そうなればイギリス帝国の下に再び戻ってくるはずであった。アメリカ独立後それぞれ共和制と君主制のイデオロギー的優位を競って米英は厳しい冷戦状態にあった。この緊張の中人口わずか30万人のカナダは1000万人の合衆国に対する防衛戦力として先住民の勢力に依存せざるをえず、親密な同盟関係を結び武器の供給を行っていた。1812年の戦争はその状況を一気に整理し、米加の国境は画定し以後米英は北米におけるお互いの存在を認め合い調和した関係を築いた。他方、孤立した先住民は強力な主権国家合衆国に圧倒され、西部は入植を競う場として「フロンティア」と位置づけられてゆく。

吉田ゆり子「日本の城と樹木―人びとの暮しと城との関係に注目して―」
 城に関する歴史研究は、軍事的拠点としての城の縄張りや政治的攻防の歴史が主題となり、戦闘のない時代を長く経験した日本近世において、城と都市、城と人びとの暮しとの関係に変化がみられたことに注目されることはほとんどなかった。ましてや、明治維新を迎え、城が明治政府に接収されてゆく過程で、城が本来の意味を失い無用の長物化してゆく歴史、廃城の過程と、近代化の中で城が再び注目されてゆく歴史を明らかにした研究は少ない。
 本報告では、本来戦闘用に建造された城に、意外にも樹木が一定の法則性をもって植えつけられている事実を確認し、樹木と城との関係を明らかにする。さらに、維新期における廃城の実態を検証した上で、城や濠のみならず、城下町と樹木との親和性、明治前期の東京における都市の衛生管理上、樹木が積極的に用いられた政策を述べ、現在では失われてしまった樹木と城?城下町の近代化の過程を明らかにしてゆく。

福嶋千穂「近世ポーランド?リトアニアの東部地域における宗派問題:殉教事件を例に」
 世界屈指のカトリック国として知られるポーランドであるが、16世紀から17世紀にかけて、その宗派的状況はより複雑であった。これはリトアニアと連合し多民族の居住する広大な国土を抱えていたこと、そして西欧から宗教改革運動がもたらされたことに起因する。また16世紀末の教会合同も複雑な状況をさらに助長した。
 にもかかわらず近世のポーランド?リトアニアは、ユグノー戦争や三十年戦争に見舞われた同時代の西欧とは異なり、宗教戦争を回避することに成功した。しかし教会合同の影響を直接的に被った東部地域に限定すると、17世紀のウクライナ?コサックの蜂起には宗教色が濃厚にうかがえ、また都市住民の暴動が殉教事件を引き起こした例もみられる。宗派問題が武力衝突に発展した例としてとくに殉教に注目し、その背景を紐解き後世への影響についても考えてみたい。

飯塚正人「イスラーム世界の歴史とイスラーム」
 現場で世界史教育に携わっておられる先生方が「イスラーム世界の歴史はわかりにくく教えにくい」と慨嘆なさるとき、その大きな原因の一つは、イスラームという宗教とイスラーム教徒の歴史の関係があまりにわかりにくいことにあるのではないでしょうか。実際、教科書?参考書や一昨年秋に10年ぶりの全面改訂を見た『世界史用語集』を読んでみても、個別の事象とイスラームの関係については、10年前、20年前とまったく異なる解説が付されていることが珍しくありません。それはこの問題が容易に解決できないことの証でしょう。
 キリスト教西欧の歴史であれば、聖職売買や贖宥状の販売、はたまた叙任権闘争のような形で腐敗や対立の構造が見えるのですが、イスラーム史の場合はそれがなかなか見えません。このため、われわれ研究者も問題を個別に考え続けるしかないのが実情なのですが、それでもたとえば最新の『世界史用語集』で「イスラーム教の理念を尊重し、イスラーム法によって秩序づけられた共同体を建設しようとする立場」と最大公約数的な正しさで説明されている--がゆえに、逆に他のイスラームとの違いがわからない--「イスラーム原理主義」の思想と実像を紹介することで、この問題を考え続けるためのヒントくらいは提示できるのではないかと思います。よって、このセミナーではいくつかの視点から、イスラーム世界の歴史とイスラームの関係について考察します。

【科研調査報告】鈴木茂「高大連携による近現代史教育の可能性 ―科研費プロジェクト3年間の経験から―」
 東京外国語大学海外事情研究所に所属する教員を中心に、2013-2015年度「地域研究に基づく「世界史」教育の実践的研究」を行った。この報告では、3年間にわたって実施した各種アンケート、聴き取り調査から、地域研究と連動した世界史教育、とりわけ日本を含む近現代史の教育が抱える課題と可能性について検討する。いま高校における歴史教育は、新必修科目として創設される「歴史総合」の内容や教科書?教材、教育方法、現行の大学入試センター試験に代わる新テストの導入など、大きな変化に直面している。こうした動きに対し、歴史学?地域研究の研究?教育に携わる大学および大学教員がどのように貢献できるのか、考えてみたい。


講演概要のPDF版はこちらです。

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