スーダンの紛争は、軍事政権トップのブルハーン指揮下の国軍と、政権ナンバー2のダガロ(通称ヘメティ)率いるRSFとの武力衝突である。現在、特に首都ハルツームと西部ダルフールで激しく、収束が見通せない。20日の報道では、ハルツーム市の中心部をRSFが制圧しているという(BBC Africa Today, ルモンド)。RSFは国軍から独立した治安組織で、その規模は8~12万人と言われる。14~25万人の規模とされる国軍への統合は困難で、統合プロセスをめぐる対立から武力衝突に発展した。
RSFは、かつてダルフールで非アラブ系住民に激しい暴力を加えた民兵組織ジャンジャウィードの流れを汲む。2019年のクーデタで失脚したオマール?エル?バシールは、国軍だけを強化することを避けて、ヘメティのRSFをいわば国軍の対抗勢力として重用した。2013年以降RSFはバシールの警護兵の役割を担うようになったが、2019年に反バシールの市民運動が強まると、彼を追い落とすクーデタで、ブルハーンとともに重要な役回りを演じた(4月18日付ルモンド)。
ダルフール出身のヘメティは、同地域にある金鉱山をはじめ国内に数多くの利権を持つ。カネと兵力を利用して、国内外で強力なネットワークを築き上げてきた。イエメン内戦への派兵を通じてサウジアラビアやアラブ首長国連邦と強いコネクションを作り、リビアの反政府勢力ハフタル将軍やロシアの民兵組織ワグネルとも関係を持ってきた。
一方、ブルハーンはスーダン国軍のエリートである。国軍はハルツームの軍事学校出身の北部人が支配しており、ブルハーンもその一人である。エジプトの軍事学校への留学経験を持つ彼は、エジプトと強い繋がりを持っている。フランスの研究者ローラン?マルシャルは、「ブルハーンは、(エジプト大統領の)シーシーのようになりたいのだ」と述べている(17日付けルモンド)。
国連、AU、アラブ連盟などの国際機関や関係国がこぞって停戦を呼びかけているが、見通しは立っていない。国連は、周辺国の介入により紛争が長期化することを恐れている。ヘメティがダルフールを地盤としているため、事態の展開によってはリビアのように国土が分裂する可能性も排除できない。
(武内進一)