コンゴ東部情勢と2つの地域機構
2025/02/02/Sun
29~30日にかけて、コンゴ東部の主要都市ゴマは反政府武装勢力M23に制圧された。事態の外交的打開に向けてアフリカの地域機構も関与を模索しているが、2つの地域機構が異なる動きを見せている。
29日、東アフリカ共同体(EAC)は臨時サミットを開催した。このオンライン会合には、加盟国8ヵ国のうち、コンゴ民主共和国を除く7ヵ国が参加した。会合では、コンゴにM23との直接対話を促す声明が発表された。ルワンダのカガメ大統領はこの会合で、M23との直接対話を拒否するチセケディ?コンゴ大統領の姿勢を批判した。
31日、南部アフリカ開発共同体(SADC)の臨時サミットが開催された。ジンバブウェのハラレで開催され、島嶼国の加盟国3ヵ国を除く13ヵ国の首脳が集まった。声明では、「M23とルワンダ国軍」によるSADC平和維持軍(SAMIDRC)への攻撃を強く非難したうえで、コンゴ支援へのコミットメントを約束した。コンゴはSADCに加盟しているが、ルワンダは加盟国ではない。
コンゴ東部紛争に対して、アフリカ諸国は2つの和平プロセスを走らせている。ひとつは、AUが指名したアンゴラのロウレンソ大統領によるルアンダ?プロセス、もうひとつは、ケニアのケニヤッタ元大統領が主導するナイロビ?プロセスである。
いずれの和平プロセスもうまく進んでいない。ルアンダ?プロセスが破綻した理由について、31日のSADCサミット声明では、M23とルワンダ軍による停戦合意違反がその理由だと述べている。一方、ルワンダ側は、チセケディがM23と直接対話しないことがその理由だと繰り返し、29日のEACサミット声明ではその主張が盛り込まれた形である。
二つの地域機構の声明に違いが出る背景には、チセケディとカガメが、それぞれ他のアフリカ諸国首脳とどのような関係を結んでいるかが影響している。チセケディは、ケニアのルト大統領を信頼していない。2023年12月に、M23と共闘する「コンゴ川同盟」(AFC)がナイロビで旗揚げして以来、両者の関係は悪化している(30日付ルモンド)。
EACはナイロビ?プロセスに基づいて2022年9月以降平和維持部隊(EACRF)をコンゴ東部に派遣したが、チセケディはM23との戦闘に無力だとして不満を表明し、2023年5月にはSADCの平和維持部隊(SAMIDRC)の受入れを表明した。その後、EACRFは2023年12月に撤収し、M23により強いアプローチを取るSAMIDRCが国連平和維持部隊MONUSCOとともにコンゴ東部に展開している。SAMIDRCもMONUSCOもM23と激しい戦闘を行っており、ゴマ制圧に際しては、2つの平和維持部隊で17名の兵士(うち13名が南アフリカ兵)が死亡した。
一方、カガメはSADCの役割を認めていない。1月30日には、南アフリカのラマポサ大統領に不満を表明し、南アフリカは仲介者の役割にない、SAMIDRCは平和維持部隊ではない、紛争を望むならルワンダもそう対応する、と脅しとも取れる内容をXに投稿した。
29日のEACサミット声明、31日のSADCサミット声明のいずれも、2つの地域機構が近日中に合同サミットを開催すると述べている。これが事態の打開につながることを望みたい。(武内進一)
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